甕のぞき
いろいろなことがいつもと違った2020年度。
藍建ても、例年と異なり、1甕ずつ3回行うことにしました。
そして迎えた3回目、2月の新月。アルスシムラでは、はじめての冬生まれの藍。
寒さに負けず、調子よく染まっていたのですが、4月に入ってぱたりと調子が変わりました。
そして余韻を残さず、急激に色を失ってしまいました。
「甕のぞき」という言葉の表す内容は、「藍染の最後のころの、ごく薄い水色」だとか、「藍甕の中の色素がほとんど無くなって、底が見えるくらいになったころの色」だとか、諸説あるようですが、いずれも、藍が永く永く続いた後に、という意味を含んでいるようです。
残念ながら今回の藍は、そこまで永らえさせることはできませんでした。
それでも甕をのぞくと、今は何もない甕の中に、藍のものなのか、生徒や講師の願いなのか、何かの想いが深く沈み、静かに眠っているような気がします。
また次の藍を建てる時には、甕の中には藍だけではなく、生徒のにぎやかな声や熱い想いがあふれる事でしょう。
それまでは、しばしの休息です。